確定判決とSIDSの予防

(しっかりと看護しなければSIDSでも責任)

(20004年5月26日)

2004年4月28日
東京地裁八王子支部で
東京都立八王子小児病院で亡くなった志保ちゃんの裁判の判決が
言い渡されました。
病院側の過失が認められました。
その後、東京都は控訴しないことを決め、5月12日、勝訴が確定しました。


『死因は窒息、乳幼児突然死症候群(SIDS)とも断定できないが
看護師の見回りや、モニター機器で乳児の状態を
注意深く監視していれば予防できた。』
と指摘し。
『小児専門の病院には高度な注意義務があるのに、これを怠った。』
と病院側の過失を認める判決が出ました。

つまり、しっかりと看護していなければ、
SIDSだから責任はないということは許されないと言う判断で
志保ちゃんの死は病院の責任だと司法が認めたのです。


とても重要な認定部分に

仮に死因がSIDSだとしても
@うつぶせ寝との関連性が指摘されている事から、細心の注意が必要だった。
A異常の発見が早ければ助かった可能性がある。

僕達遺族は
司法によるこの判断を待ち望んでいました。


1998年1月17日
生後38日の志保ちゃんは軽い胃の軸捻転と診断されました。
胃がねじれ、ミルクが腸に流れにくくなる病気です。
治療の一環として、うつぶせ寝が効果的な病気でもあります。

診断した病院は、家族にこう言いました。
『いきなりご家庭でうつぶせ寝にするのは危険なので
病院で2.3日預かりましょう。
24時間看護婦が看ているから病院なら安全に出来る。
病室には必ず一人担当看護婦が付きます』。

実際はどうだったか
二つの病室、9人の患者に対して一人の看護婦
志保ちゃんは冷たくなって発見されるまで異常に気付いてもらえなかったのです。



志保ちゃんのお父さんとお母さんが裁判の為に集めた資料があります。
これまでに公開されている専門家の意見です。
ここでは特に

SIDSの予防について、

一般的に重要と思われる内容を抜粋して
公開します。


特に参考にして欲しい部分は色を変えました。


SIDSの予防

題名(出典)

作成者

重要な内容

『うつぶせ寝が乳児の運動
発達に与える影響』
(小児科臨床大49巻6号)

林敬次ほか

一ヶ月児では、腹臥位で頭を挙上できる児は10%に過ぎず、
うつぶせ寝による危険を回避する事が出来ない。
本件事故の一年半前の時点で、うつぶせ寝をさせないことは
SIDSの予防法として最も効果のある方法とされている。

『乳児人形モデルによる再呼吸
シミュレートからみた
寝具の危険性の検討』
(平成10、11年度科学研究成果報告書)

舟山眞人

うつぶせ寝ではいかなる寝具を用いても、再呼吸の危険性は
高まる。
たとえ固い布団であってもバスタオル一枚の使用が
CO2拡散性に悪影響を及ぼす。

『新生児のSIDS』
(小児科検診療63巻3号)

山南貞夫

病棟に勤務するスタッフが少なくなる深夜から早朝にかけて
SIDS/ALTEが発症するとされている。
『腹臥位でのリスクが高い事は明白である』こと。
SIDS/ALTE73例のうち、母子同室のものは2例に過ぎず、
72例は母子別室すなわち新生児室発症であり、
母子同質の方が目が行き届きやすい為SIDSの発症が少ない。

『わが国のSIDSの病疫』
(小児内科代30巻4号)

大神和廣

SIDSの研究史上最も重要なリスクファクターはうつぶせ寝である

『乳幼児突然死症候群と
その家族の為に』

仁志田博司

仰向けの場合は遠くから仕事をしながらちらりと赤ちゃんの頭を
見ただけでも赤ちゃんの様子を把握する事が出来るが、
うつぶせ寝の場合は近寄って顔を覗き込まなければならない。

『乳幼児突然死症候群』
(小児内科30巻4号)

仁志田博司

うつぶせ寝をやめるキャンペーンによって、世界各国のSIDSの
発生頻度が大幅に減少した。
さらにこれまで知られているSIDSのリスク因子を考慮した
管理体制が十分にとられていたかを問われる時代となっている。

新聞記事
1998年
6月2日

毎日新聞

我が国においても、厚生省の調査で、SIDS発症リスクとして
うつぶせ寝3倍、粉ミルク4.8倍、喫煙4.7倍と発表された。

新聞記事
1998年
6月6日

毎日新聞

厚生省発表にうつぶせ寝によるSIDSのリスクは、
就寝時の寝かせ方を基にした数字であり、死亡発見時の寝かせ方
を元にすると、リスクはの『3倍』よりはるかに高くなる。

『ストップ!SIDS』

厚生省

1998年以降、我が国においても、SIDSを減らすための
キャンペーンとして、
@あお向け寝で育てよう
Aタバコをやめよう
B出来るだけ母乳で育てよう
と呼びかけている。

新聞記事
1999年
6月19日

読売新聞

あお向け寝などを推奨するキャンぺーンの結果、
1998年のSIDSが26%減少した。

『乳幼児突然死症候群を予防
する為の日常生活指導』
(小児看護22巻1号)

井上雅子
ほか3名

SIDSの危険因子を踏まえた日常生活指導として、
・母子同室
・顔の周囲に防水シーツを敷かない
・夜間部屋の温度は18℃
・うつぶせ寝にする時は着せすぎに注意する
・夜間はあお向けに寝かしつける
・薄手で袖の長すぎない衣類
・うつ伏せ寝にする時は、子どものそばにいるようにする。
などとされている。

 

『赤ちゃんは仰向けで寝かそう』
(第50回日本法医学会近畿地方会
講演要旨集)

高津光洋

乳児の急死を予防する為にはまず、
『赤ちゃんはあお向けに寝かせよう』の啓蒙活動を積極的に
展開すべきと考えられている。
今後は死因がたとえSIDSであっても十分に医療・看護上の
注意義務を果たしたかが問われるべきであり、他人の子を預かる
専門施設として監視した以外でうつ伏せ寝をさせない、
早期の異常発見の努力、異常発見後の適切な対応など
安全管理体制の充実が求められている。

『うつ伏せ寝の流行に
法医学の立場からの警告』
(マタニティ1990年1月号)

佐藤喜宣

SIDSは『病名』ではなく、突然死の中で死因のはっきりしないもの
を言う。

赤ちゃんの異常を発見しにくいなどの『うつ伏せ寝のリスク』を
指摘している。

『平成15年度乳幼児突然死症候群
(SIDS)対策強化月間について』

厚生労働省

SIDSの発生が平成10年(1998年)のうつ伏せ寝をやめる
キャンペーンの後減少し、平成14年(2002年)には
平成9年以前に比べ半減している。

新聞記事
1991年
9月17日

毎日新聞

突然死した赤ちゃんはうつ伏せ寝が多い事。
『うつ伏せ寝にしたら、どんな状況でも目を離してはいけない』
と指摘されている。

                     


これから育って行く子ども達の為に
育児、保育、看護
そして家庭でも
すべてに役立てて欲しいと願います。
2004年5月26日