六回忌に

(2004年3月26日)

5年前のこの日の事故が無ければ
風歌はもう6歳を迎えるところです。

蘇生術をあきらめた後の変わりゆく顔色
取調べ直後に触れた風歌の冷たさ
家から葬儀場まで抱っこしたときの魂の抜けた娘の重さ
火葬を終えた風歌

そのすべての記憶が
楽しかった風歌との思い出と重なり
机においてある写真や
アルバムを見ることすら辛くて出来ない日もあります。

この悲しみを抱えた家族をこれ以上増やしたくないと心から思います。


二つの判決

2004年3月25日に
二件の乳児突然死訴訟に対する判決が出されました。

一つは千葉の真滉(まひろ)君を襲った事故の判決です。
非常に良い判決で時代に沿う内容だと思います。
不誠実な病院に対する正当な判断を司法が出してくれたのです。
詳しくはご両親がHP上で発表されています。

SIDSと言うゴミ箱のなかで
こちらをご覧ください。

判決を伝えるニュースを以下に紹介します。

千葉地裁、5800万円の賠償命令 うつぶせで窒息、乳児死亡

 千葉県船橋市立医療センターの看護師の不適切な処置のため、
生後4カ月半の二男がうつぶせになって窒息、約1年後に死亡したとして、
同県鎌ケ谷市の自営業石井慎也さん(30)と妻忍さん(30)が
船橋市に約7400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、
千葉地裁は25日約5800万円の支払いを命じた。
 判決理由で安藤裕子裁判長は「二男が寝返りを打って
窒息を起こさないよう注意すべきだった」と述べ、
医療センター側の過失を認めた。船橋市は当初、
乳幼児突然死症候群(SIDS)だったと主張していた。
 判決によると、石井さんの二男真滉ちゃんは1999年6月、
細気管支炎で入院。同月16日、当直の看護師2人が真滉ちゃんをあやすために
脇腹などにマッサージ器を当て、
約1時間後に戻るとうつぶせで氷まくらに顔をうずめ、
窒息して心肺停止状態になっていた。
真滉ちゃんは翌年8月に死亡した。(共同通信)

[3月25日16時34分更新]

千葉の男児うつぶせ死、千葉地裁が病院側の過失認める

 千葉県船橋市金杉の船橋市立医療センターで、
生後4か月半の二男がうつぶせ状態になって窒息、
約1年2か月後に死亡したのは「病院側のミスによる」として、
両親が、同市を相手取り、約7400万円の損害賠償を求めた民事訴訟の判決が25日、
千葉地裁であった。
 安藤裕子裁判長は「うつぶせにならないよう観察を怠ったため、
呼吸を妨げられて死亡した」とし、同市に約5860万円の支払いを命じた。
 訴えていたのは、同県鎌ヶ谷市丸山、飲食店経営石井慎也さん(30)と妻忍さん(30)。
 判決によると、石井さんの二男の真滉(まひろ)ちゃんは1999年6月14日、
細気管支炎と診断されて同病院に入院したが、同月16日朝、
ベッドで水枕に顔を押しつけ心肺停止の状態で発見された。
真滉ちゃんは翌年8月16日に死亡した。

 市側は当初、真滉ちゃんの死因はSIDS(乳幼児突然死症候群)と主張。
その後、「急性細気管支炎による呼吸停止」と変更したが、
うつぶせになったこととの因果関係を一貫して否定していた。
 判決は、うつぶせになり、鼻と口がほぼふさがれたことが死亡につながったと認定。
そのうえで、観察を怠った担当看護師2人の過失で事故が起きたと指摘した。

 この事故を巡っては、石井さん夫妻から刑事告訴を受けた千葉県警が、
2003年1月、看護師2人を業務上過失致死容疑で書類送検している。(読売新聞)

[3月26日0時16分更新


もう一つの判決はこれまでの流れを10年前に戻すような
ひどい判決です。
埼玉県の和(なごみ)ちゃんを襲った事故の判決です。
まず、その判決の前に
『SIDSってほんと?』の中に和(なごみ)ちゃんのお父さんが寄稿した
文章の一部を抜粋します。

生後4ヶ月の娘『和(なごみ)』は1998年3月11日
預けていた***保育室(無認可)にて変死体で発見された。
警察のプレハブ倉庫で対面した『なごみ』の顔、
上半身は青黒く変色し、引っ掻き傷の付いた頬は
もがき苦しんだ様を訴えていた。

翌日、司法解剖となり、結果は、『おそらく原因不明のSIDSだろう』
とのことだった。
この不可解な死に疑問を感じた私は、当日の保育のあり方は
どうだったのかを調べ始めた。
すると『なごみ』はまだ寝返りが出来ないのに、
うつぶせ寝で約4時間放置されていた事、
丸一日、オムツ交換されず授乳の有無もわからないこと
掛け布団を頭までかぶせられていたこと
、死亡の4〜5日前に
同様の放置で危険な状態を間一髪救われていた事などが
明かになった。・・・・・・


そしてこれがこの事故の判決を伝えるニュースです。


うつぶせ寝死亡訴訟 「死因はSIDS」原告の請求を棄却
−−地裁川越支部 /埼玉

 川越市の無認可保育所で98年、うつぶせで寝ていた女児(当時4カ月)が死亡し、
両親が所長らを相手取り約7000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、
さいたま地裁川越支部は25日、原告の請求を棄却した。
清水研一裁判長は、被告側の「女児は横を向いていた」という証言を採用、
「死因は窒息死ではなく、乳幼児突然死症候群(SIDS)」と判断した。
 訴状などによると、98年3月11日午後2時50分ごろ、保育所で女児が
布団でぐったりしているのを所長が気づき、病院に運んだが既に死亡していた。
両親は「窒息死」を主張していた。
 判決は、「(保育所側の証言は)具体的で不自然な点はない。
女児が下を向いていたという前提事実は採用できない
」と判断
。また「SIDSは原因不明の突然死で、回避可能性は存在しない」と原告の主張を退けた。
 判決後、父親は「密室の事故はすべて被告側に有利な判決がでる」と不満を述べ、
控訴する考えを示した。所長は「どちらもつらい立場なので言葉が見つかりません」と話した。
【村上尊一】(毎日新聞)

[3月26日19時11分更新]

寝返りの出来ない生後4ヶ月の乳児を
うつぶせ寝で掛け布団を頭までかぶせ
4時間放置する保育園

この施設に罪は無いという判断
SIDSだから仕方が無いという考え

非常に腹が立ちます。

同じ日に出た判決とは思えません。
これまで積み重ねてきた
うつぶせ寝で放置する事は悪である
と言う考えを全面的に否定する判決です。

お願いします。
この判断が間違っている事に
どうか気が付いてください。
清水研一裁判長様


旧約聖書

SIDSについて調べると
『SIDSは旧約聖書にも出てくる病気です』
と言うような文言を見る事があると思います。

旧約聖書の中で
朝起きると子どもが死んでいた
母親が寝ている間に子供の上に覆いかぶさり死亡させたらしいが
これは現在ではSIDSと考えられる。と

この文言はSIDS学会でも使われています。

ひねくれものの僕は
その赤ちゃんは解剖を受けて他の死因を排除されたのか?
客観的に窒息ではないと証明できるのか?
権威のある立場の人間が言っていいことなのか?
SIDSの権威付けに旧約聖書を使っているだけではないのか?
こじ付けではないのか?
そういう疑問から原文を読みたいと願っていました。

しかし旧約聖書は39冊から成り立っていて
とても見つけるのは難しいと思っていました。
国語辞典のような厚さの本が39冊です。

志保ちゃんのお母さんが原文を探してくれました。
下に貼り付けます。

旧約聖書 列王記 上 第3章より一部抜粋

そのころ、遊女が二人王のもとに来て、その前に立った。
一人はこう言った。「王様、よろしくお願いします。
わたしはこの人と同じ家に住んでいて、その家で、この人のいるところでお産をしました。
三日後に、この人もお産をしました。わたしたちは一緒に家にいて、
ほかにだれもいず、わたしたちは二人きりでした。
ある晩のこと、この人は寝ているときに赤ん坊に寄りかかったため、
この人の赤ん坊が死んでしまいました。

そこで夜中に起きて、わたしの眠っている間にわたしの赤ん坊を
取って自分のふところに寝かせ、死んだ子をわたしのふところに寝かせたのです。
わたしが朝起きて自分の子に乳をふくませようとしたところ、
子供は死んでいるではありませんか。その朝子供をよく見ますと、
わたしの産んだ子ではありませんでした。」
もう一人の女が言った。「いいえ、生きているのがわたしの子で、
死んだのがあなたの子です。」さきの女は言った。
「いいえ、死んだのはあなたの子で、生きているのがわたしの子です。」二人は王の前で言い争った。
王は言った。「『生きているのがわたしの子で、
死んだのはあなたの子だ』と一人が言えば、もう一人は、
『いいえ、死んだのはあなたの子で、生きているのがわたしの子だ』と言う。」
そして王は、「剣を持って来るように」と命じた。王の前に剣が持って来られると、
王は命じた。「生きている子を二つに裂き、
一人に半分を、もう一人に他の半分を与えよ。」
生きている子の母親は、その子を哀れに思うあまり、
「王様、お願いです。この子を生かしたままこの人にあげてください。
この子を絶対に殺さないでください」と言った。しかし、もう一人の女は、
「この子をわたしのものにも、この人のものにもしないで、裂いて分けてください」と言った。
王はそれに答えて宣言した。
「この子を生かしたまま、さきの女に与えよ。この子を殺してはならない。その女がこの子の母である。」
王の下した裁きを聞いて、
イスラエルの人々は皆、王を畏れ敬うようになった。
神の知恵が王のうちにあって、正しい裁きを行うのを見たからである。


日本聖書協会刊行の『聖書 新共同訳 旧約聖書続編つき』(1989年版)

大岡越前です。

僕の疑問は深まるばかりです。
事実として伺えるのは色を変えた部分
この人は寝ているときに赤ん坊に寄りかかったため、
この人の赤ん坊が死んでしまいました。 』
これだけです。
もう一人の近くにいた母親の証言だけです。


この事例をSIDSと考える事に強い違和感を覚えます。


SIDSはどこへ・・・

なごみちゃんのお父さんが平成15年度の
保育施設での死亡事例一覧を作成されました。

公開するわけにはいかないのですが
驚くべき結果が出ています。

死因に
『SIDS(乳幼児突然死症候群)』が無いのです。

悲劇が減ったのか?

そうではないのです。

朝、愛する我が子を普通に保育園に預ける、
そして
それが永遠の別れとなる突然死は現実に起こっています。

ではどういうことか?

死因が変わってきているのです。
『急性循環不全』
『多臓器不全』
『ゆさぶられっこ症候群』
『気管支炎』
『間質性肺炎』
などにです。

このような死因が診断書に付くと警察は病死として
SIDSと変わらぬ扱いをし
事件や事故ではないと処理しています。

実例としてHP宛に届いたメールを紹介します。
一部プライバシーに関わる部分などは割愛して
紹介します。

はじめまして、メールをします・・・・
風の足跡のメッセージを見て、そしてママやパパの気持ちを
読んで涙が出ました・・・・実は私も**************
(託児所)で娘を亡くしました。
私は色々あり一人で生み一人で育てていました。
昼も夜も働きながら、苦しい中でも子供と生きていくのが楽しかった・・なのに
夜の仕事を終えて迎えに行くと・・・病院に運ばれていて
1歳半という短い人生を・・・・・
答えは突然死と言われて、でもいまだに信じられないのです。
色々調べていけば、ある保母さんが(私の子供の上に、大きな子供が
高い所から飛び降りた)と話してくれたのです。。。。
警察にその事を話をしたら、もう解剖もすんでいるからいまさらと言われました
********
      ****   同じ悲しみをもつ親から・・・・

このお子さんの正式な診断は『間質性肺炎』とつけられたそうです。
お母さんからのメールの文からもわかるとおり
警察は解剖所見でしか判断しません。
病死と判断したのです。

そうした考えから犠牲になる
子供達がかわいそうではないですか。

ある保育施設では2歳児が0歳児の口にパンを詰め込み死亡したという事例も起こっています。
同じ部屋にいた0歳児の兄(3歳児)が身振りを交えて親に説明したそうです。
2歳児に罪があるとは思えませんが
その保育施設の人間がそばにいれば防げた事故です。
死因は現在調査中ですが
警察は全く動いていません。

ある保育施設で
押入れの中で牛乳パックの角と天井に挟まれ
頸部に圧迫痕が付いた状態で冷たくなって発見された赤ちゃんがいます。
死因は『多臓器不全』
警察は解剖所見を尊重して捜査を打ち切りました。


SIDSの免罪符としての効果が薄れてきたと思い始めた矢先
一番恐れていた方向に問題が摩り替わって来ています。

警察には子供達の為の努力を願います
初めに解剖所見ありきでは真実が見えなくなります。
解剖所見を捜査で覆す位の仕事をしてください。

一つの事件事故で法律が変わる可能性のあるこの時代に
病院や保育施設での乳児の突然死は
減ることなく起こり続けています。
犠牲者はもう十分出ていると思います。
どうか誠実な対応を
子供達の未来の為に

(2004年3月26日)
風歌の命日に
宮田浩太郎