第14回日本SIDS学会学術集会
『講演』
ドイツ エッセンでの現状報告
Germany Essenn University Thomas Bajanowski
SIDSの定義の変遷
1969 Beckwith
1989 Willinger
1996 Krous
SIDSの定義が、だんだん細かく狭義のものに変わるにつれ、
定義にあてはまる事例が減ってきた
今日の幼児・児童虐待とその背景
広島大学院法医学 永尾正崇
1)Child Abuseと Domestic Violenceの関係性は深い
夫→妻→子供
2)社会の子供への無関心
虐待を疑っていても、児童相談所などへの報告を、近隣の人間がしない
『社会のneglect』
3)「不登校」のウラには、虐待が隠されているケースがある
大阪で親が子供2人に食事を与えず、餓死させた事件は、子供達は親によって
不登校にさせられていた『親による家への閉じ込め』
これは、学校関係者の介入が強くあれば、発見が早く、死に至るのを防げた
4)愛知でも同様の事件があり、その後、「危機児童相談センター?」が愛知県に設置された
5)「児童虐待」は、密室で、絶対的強者と絶対的弱者が同室の状況で起こる
0〜4歳の発生が圧倒的に多く、保育所・幼稚園に通う社会との接点ができる4歳以上に
なると、減ってくる
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『シンポジウム』
乳幼児突然死症候群への体制確立に向けてー死亡状況調査等を中心にー
ドイツでのSIDS死亡状況調査(DSI)の経験と結果
Germany Hmburg-Eppendorf University Medical Center Jan P. Sprhake
現在ハンブルグでは、6人の法医が、それぞれ事故のあったすべての現場へ行き、死亡状況を
調査している
赤ちゃんの置かれていた場所、室温、寝具、体位、食事の経過、等々を調査する
それによって、ハンブルグでのSIDSは、90年代には、年間何十例もあったものが、
2006年には、2例までに減った
しかし、2004のSan Diego Definitionは、あまりにもルールが細かすぎて、項目全てに
対応させるのが難しい
日本における死亡状況調査等について
北九州市立八幡病院小児救急センター 市川光太郎
日本の法医80人へのアンケート
1)2005.3.の新ガイドラインについて、約4割が「知らない」もしくは「使わない」と答えた
2)2007.6.配布のSIDS診断フローチャート(SIDS診断の手引き&チェックリスト)について、
約2割が「知らない」もしくは「使わない」と答えた
法医から臨床医への意見要望
充分な情報(死亡時の養育環境など)が、伝わってこない
臨床医から、警察・検死官への要望
同様にそれまでの養育状況や死亡時の養育環境等の情報が、伝わってこない
以上のような状況であるから、臨床医が、安易に死亡診断をおこなわず、全例検死を行い、
解剖承諾にもっと力をいれるべき
警察・監察医・病理との連携が必要である
また、新ガイドラインがうまく使われておらず、地域格差もあり、
システムがまだまだ徹底されていない
乳幼児急死の死因解析システムー東京監察医務院の現状紹介
東京監察医務院 福永龍繁
東京23区全てを管轄
年間予算11億円
常勤63名(うち、医師11人)非常勤監察医40名
1日10名の医師が担当
福永先生は、年間約120体を解剖してる
1歳未満の剖検数は、毎年50体前後
死因を「SIDS」「不詳」「原因不明の突然死」、いずれを書くかは、剖検した医師によって違う
福永先生としては、
「SIDS]と診断するのは、「窒息」がほぼ考えられない場合
「不詳」と診断するのは、「窒息」も考えられる場合
乳幼児の解剖の場合、解剖前に死亡前の情報(母子手帳や育児データなど)を集めてから、
死因の究明をしたい
発見時のDSIファクター(布団・体位・室温・汗のかき具合など)が、大切
そのためにも、医師の目で現場を見たいが、しかし、現状では、現場検証は警察に頼らざるを得ない
警察の検視体制について
岐阜県警本部刑事部捜査一課主席検視官 小椋利藤
岐阜県では、H19年度の検視体は2031体
うち、乳幼児は8体
うち解剖は4体
乳幼児は、100%解剖が望ましいが、特に母親の拒否により
(赤ちゃんの身体にメスを入れないでほしいという母親の強い要望)、解剖が非常に少ない
しかし、解剖して「SIDS」と診断が出れば、誰でもが納得でき救われるのに...
現在日本では、東京や大阪や神戸等を除き、法医が各県に1人のがほとんどである上に、
警察内でも、検死官のなり手が「責任が重い」ということで、非常に少ないのが現状
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『質疑応答』
Sperhake 市川 福永 小椋
1)救急師が現場をデジカメで映すのはどうか?
死因究明のため?
捜査のため?
記憶補助のため?
救急師は通常3名で救急現場へ行くが、そのうち1名はデジカメで撮影できなくもないが
家族には、捜査に使うのか?と疑われやすいし、個人情報保護法もあり、捜査の証拠としては
使えない。しかし、死因究明の場合であれば、大丈夫だと思う
2)現場の温度差
虐待かどうかの疑いを持つのに、積極的な医師と消極的な医師がいる
北九州では、医師間の教育の指導をボトムアップしていきたい
3)厚労省は...
ドイツのハンブルグでは6人の医師が現場へ行き、現場検証してから解剖、診断するのに、
日本の厚労省は、原因究明にゆるく甘過ぎる(福永談)
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