新基準について

(2005年5月15日)


平成17年4月18日厚生労働省は
SIDS(乳幼児突然死症候群)の診断について
新しいガイドラインを発表しました。
思う事が多々あるのですが、
まず、こちらの新聞をお読みください。


(平成17年3月6日大分合同新聞より

この記事は、平成17年3月6日の新聞にありました。
『乳幼児突然死『解剖せず診断』6割』、とあります。
この事情を言えば、
ご家庭で起こった突然死の場合
家族の協力が無ければ、
つまり、
我が子を解剖してもいいですよ、
と言う許可を親が出さない限り
警察や病院はたとえどんな場合でも
解剖を強制できないのです。

それを拒否するという感情は
親の気持ちからすれば当然の事だと僕は思います。

出来る事なら、綺麗な身体のままで
側にいたい、送ってあげたいと思うのは
遺族の願いです。
痛みは感じないとはいえ
我が子にメスが入ることを望むはずが無いのです。

しかしこの考えが、SIDSを含めた
乳児の突然死の研究が進まない理由かもしれません。
SIDSという概念が日本に登場して
30年以上経ちますが、未だに原因も経過も
何もわかっていません。

この記事から約一ヶ月後に新しい診断基準のガイドラインが出されました。

厚生労働省の報道発表資料を
皆さんも読んでください。


乳幼児突然死症候群(SIDS)に関する
ガイドラインの公表について

 乳幼児突然死症候群(SIDS)に関するガイドラインについて、
 厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)「乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断のための
 ガイドライン作成およびその予防と発症率軽減に関する研究」
 (主任研究者:坂上正道北里大学名誉教授)においてとりまとめを行ったので、
 別添のとおり公表します。


 【研究班】
  主任研究者  坂上 正道  北里大学名誉教授
  分担研究者  齋藤 一之  埼玉医科大学医学部法医学教授
           澤口 聡子  東京女子医科大学医学部法医学教室助教授
           高嶋 幸男  国際医療福祉大学大学院教授
           高津 光洋  東京慈恵会医科大学医学部法医学講座教授
           戸苅 創   名古屋市立大学大学院医学研究科
                   先天異常新生児小児医学分野教授
           中山 雅弘  大阪母子総合医療センター検査科部長
           仁志田 博司  東京女子医科大学母子総合医療センター新生児科教授
           平林 勝政  國學院大学法学部教授
           藤田 利治  国立保健医療科学院疫学部疫学情報室室長
           的場 梁次  大阪大学大学院医学系研究科法医学教室教授
           宮坂 勝之  国立成育医療センター手術集中治療部部長
           横田 俊平  横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学教授


--------------------------------------------------------------------------------


乳幼児突然死症候群(SIDS)に関するガイドライン
(平成17年3月:厚生労働省研究班)

 乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、それまで元気な乳幼児が、
主として睡眠中に突然死亡状態で発見され、原則として1歳未満の乳児に起こる。
日本での発症頻度はおおよそ出生4,000人に1人と推定され、生後2ヵ月から6ヵ月に多く、
稀には1歳以上で発症することがある。従来、リスク因子として妊婦および養育者の喫煙、
非母乳保育、うつぶせ寝などが挙げられており、
世界各国でこれらのリスクを軽減する運動が展開され大きな成果を挙げている
。原因に関しては、睡眠に随伴した覚醒反応の低下を含めた脳機能の異常、
先天性代謝異常症の存在、感染症、慢性の低酸素症の存在、
等々種々のものが考えられているが、未だ解明に至らず、
国内外の専門家によってその原因究明と予防法の確立にむけた研究がなされている。
これまで、我が国では本疾患に対する認識が浅く、解剖率が必ずしも高くないことから、
厚生省研究班(現厚生労働省研究班)は昭和57年に
「広義と狭義の定義」を作成して疾患の認識の普及に努めた。
平成8年の報告では、解剖されなかった例には「乳幼児突然死症候群(SIDS)の疑い」という定義を用いてきた。
しかし、平成7年からICD-10の採用により乳幼児突然死症候群(SIDS)が独立して統計処理されるようになって、
人口動態統計の0歳の死因順位では第3位に掲載されるようになり、
疾患の重要性が認識されるようになった。
この間、我が国では乳幼児突然死症候群(SIDS)、窒息、虐待の診断を巡る混乱が生じ、
社会的混乱を招く所となり、平成14年来の研究班では、
国際的に討議されつつある定義も参照して、
我が国における乳幼児突然死症候群(SIDS)に関するガイドラインを作成することになった。

 I 乳幼児突然死症候群(SIDS)の定義:
   (Sudden Infant Death Syndrome: SIDS):
   それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、
   しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、
   原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群。

 II 診断に際しての留意事項:
)  諸外国で行われている研究も考慮し、
   乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断は原則として新生児期を含めて1歳未満とするが、
   1歳を超える場合でも年齢以外の定義をみたす場合に限り乳幼児突然死症候群(SIDS)とする。*

)  乳幼児突然死症候群(SIDS)の診断は剖検に基づいて行い、
   解剖がなされない場合および死亡状況調査が実施されない場合は、
   死因の分類が不可能であり、従って、死亡診断書(死体検案書)の分類上は「12.不詳」とする。

)  乳幼児突然死症候群(SIDS)は除外診断ではなく一つの疾患単位であり、
   その診断の為には、乳幼児突然死症候群(SIDS)以外の乳幼児に突然の死をもたらす
   疾患および窒息や虐待などの外因死との鑑別診断が必要である。

)  外因死の診断には死亡現場の状況および法医学的な証拠を必要とする。
   外因死の中でも窒息死と診断するためには、体位に関係なく、
   ベッドの隙間や柵に挟み込まれるなどで頭部が拘束状態となり回避出来なくなっている、
   などの直接死因を説明しうる睡眠時の物理的状況が必要であり、
   通常使用している寝具で単にうつぶせという所見だけでは診断されない。

   また、虐待や殺人などによる意図的な窒息死は乳幼児突然死症候群(SIDS)との
   鑑別が困難な場合があり、慎重に診断する必要がある。


 *  諸外国では生後7日以上(あるいは1ヵ月以上)で生後9ヵ月未満の乳幼児突然死症候群(SIDS)と
    それ以外の年齢の乳幼児突然死症候群(SIDS)とを区別して考える場合があるが、
    これはより典型的な乳幼児突然死症候群(SIDS)を集積して原因を解明することを目的とした
    研究推進のための分類である。

 付記: 少数意見として、高津光洋分担研究者より、乳幼児突然死症候群(SIDS)は疾患とすべきではない、
     及び本ガイドラインに窒息死と診断するための説明を記載すべきではない旨の意見があった。
     その提言は文部科学研究費研究成果報告書に記載されている。



今後の課題と提言:
 乳幼児突然死症候群(SIDS)を正しく診断するための取り組みについて
 1)  全国の小児医療の臨床現場で、乳幼児突然死症候群(SIDS)に関する知識の啓発と普及を行い、
    死因が明らかでない予期せぬ突然死を解剖検査なくして乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断せず、
    警察への届出と解剖の必要性を家族に十分説明するように周知徹底する必要がある
    (小児救急医療を含む小児医療の臨床現場への適切なパンフレットの作成、配布が望ましい)

 2)  警察・警察医の死亡状況調査のためのプロトコール作成と普及および死体検案講習会の開催など、
    死体検案体制を早急に整える必要がある。  

 3)  乳幼児突然死症候群(SIDS)と窒息などの外因死との鑑別は、
     解剖所見のみでは困難な場合があり、病歴、生前の健康状態、
    状況証拠などを総合的に検討する必要があるところから、
    小児科医、病理医、法医の間で諸検査、解剖精度、死因診断などについて
    共通の認識のもとに行われることが望まれる。

 4)  乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク因子に関しては、
    時代とともに変わることが報告されており、我が国においても解剖された
    乳幼児突然死症候群(SIDS)を対象として、死亡児の病歴、発育、
    生前の健康状態、などに関して聞き取り調査を継続的に実施することでリスク因子を把握し
    広くキャンペーンを展開し発症を軽減する必要がある。

 5)  乳幼児突然死症候群(SIDS)の病態解明および予防法の確立に関する研究を進め、
    呼吸循環系の異常を早期に発見するためのモニタリングシステムの
    開発などを検討する必要がある。


乳幼児突然死症候群(SIDS)に関する研究、その他の取り組みについて:  
 6)  乳幼児突然死症候群(SIDS)の病態を究明するために、
     運営の倫理基準を定めて症例登録システムあるいは解剖で得られた
     臓器を集積するtissue bankシステムの構築を検討する必要がある。

 7)  死亡診断書(死体検案書)の分類上「12.不詳」と記載された場合、
    およびその後正確な死因が確定した場合には、
    不備照会ならびに記載事項訂正手続きが迅速に遂行される必要がある。

 8)  乳幼児突然死症候群(SIDS)で児を失った家族、
    特に母親に対する精神的なサポートの重要性の社会的認知を高め、
    そのサポートを行っていくことが重要である。

 9)  乳幼児突然死症候群(SIDS)の大半は、
    最も社会的に脆弱な生後6ヵ月未満の乳児であり、
    またその発症に保育環境が関与するところから、適切な保育環境が重要であること
    母親や父親、その家族の存在が大きいこと、などを一般社会に啓発していくことが重要である。



平成17年4月18日

結局の所
SIDSに対しては
SIDSで亡くなった子どもに共通している部分が見つかったわけでもなく
〜があるからSIDSである
などの、新しい事実や発見などは何も無く
実際は上の新聞記事にもある通り
解剖もせずにSIDSと診断してきたものであり
これからは、解剖と研究をもっとしなければいけないと
相変わらず謎に包まれているとしか読み取れません。



色を変えている部分について
少し考えたいと思います。


まず間違っている、と言うか
世界の基準から大きく外れた事が盛り込まれてあります。
)の部分にある
乳幼児突然死症候群(SIDS)は除外診断ではなく一つの疾患単位であり、
これです。

これまで散々除外診断だといってきたのです、
僕は覚えています。
たまねぎに例えて言ってましたよね。

あらゆる死因をたまねぎを剥くように
少しずつはがして行って
そこに残るものがSIDSだと

虐待、病気、窒息、
その他の死因になりうるもの
それらを全て否定できた後に残るものがSIDSであると、
SIDS学会でも聞いた覚えがあります。

ここに来て発表された
この一文が理解できません。
あらゆる学説が仮説の域を出ていない現在
何を持って一つの病気と言えるのか
示して欲しいのです。
これまでSIDSと診断された子どもに共通している事
外因的なものではなく
何か見つかっているのでしょうか?
解剖自体が出来ていない現実
それを踏まえての発表ではなんら真実味がありません。

しかし、奇妙な文章だと感じます。

)  乳幼児突然死症候群(SIDS)は除外診断ではなく一つの疾患単位であり、
   その診断の為には、乳幼児突然死症候群(SIDS)以外の乳幼児に突然の死をもたらす
   疾患および窒息や虐待などの外因死との鑑別診断が必要である。

)の文章全体を見ると
他の死因(外因子を含む)をはずさなければSIDSと診断してはいけない
そう書いています。

同じ項目で遠まわしに除外診断であると説明し
除外診断ではなく一つの疾患単位であると言う
この一文の
意味する所がわかりません。

せめてもの救いは

付記: 少数意見として、高津光洋分担研究者より、乳幼児突然死症候群(SIDS)は疾患とすべきではない、

こう言った、まっとうな意見が付記としてでも記してあることです。

しかし、この文章にも考えさせられる部分があります。

少数意見として

このガイドラインは研究成果の信憑性ではなく
もしかして多数決なのか?
考え過ぎでない事を願います。


最も問題だと思う一文があります。

)  外因死の診断には死亡現場の状況および法医学的な証拠を必要とする。
   外因死の中でも窒息死と診断するためには、体位に関係なく、
   ベッドの隙間や柵に挟み込まれるなどで頭部が拘束状態となり回避出来なくなっている、
   などの直接死因を説明しうる睡眠時の物理的状況が必要であり、
   通常使用している寝具で単にうつぶせという所見だけでは診断されない。

   また、虐待や殺人などによる意図的な窒息死は乳幼児突然死症候群(SIDS)との
   鑑別が困難な場合があり、慎重に診断する必要がある。

これです。

このガイドラインに対しては、

本ガイドラインに窒息死と診断するための説明を記載すべきではない旨の意見があった。

ここでも付記として書かれたこの文章が全てを語っています。
窒息死の診断基準を強化してどうするつもりなんでしょうか?

医療過誤による窒息事故の当事者になるかもしれない医者を守る為?

そう邪推してしまいたくなる文章です。

通常使用している寝具で単にうつぶせという所見だけでは診断されない。

どんな根拠があるのでしょうか?
うつ伏せ寝が安全だと言う
実験データなどあるのでしょうか?


普通の寝具
単なるうつ伏せ寝であっても
タオル一枚の存在や
赤ちゃんの健康状態などで
条件が大きくかわり
再呼吸(自分の吐いた息を再び吸い込む)によって
呼吸中の二酸化炭素濃度が上がることが
海外でのサルを使った動物実験
日本でもウサギを使った実験や
ウサギの実験を行った本人による人体実験も
またダミーによる実験結果によっても
証明されています。

『ISA(赤ちゃんの急死を考える会)』では
賛否はあると思いますが
乳児に対しての実験データを持っています。

100人近い乳児を普通の寝具にうつ伏せに置き
その様子をビデオで撮影し続けた会員がいるのです。
ご自身もお子さんをうつ伏せ寝で亡くされた方や
お子さんに重度の障害を負わされた方が
行動を起こされたのです。

その映像はうつ伏せの危険を
目で見える形で証明してくれます。
2002年の大阪SIDS学会で
僕達会員がコピーして希望者に配ったものがそれです。
ISAのホームページにその動画があります。
URLは
http://isa.sub.jp/test.v.htm
こちらです。


恥ずかしい話ですが、
風歌に弟が出来、我が家もこの映像に協力をと考えたのですが
僕達夫婦は恐くてできませんでした。



『うつ伏せ寝は危険です。』

厚生労働省はそう啓蒙してきたではありませんか。
その成果がようやく実り始め
突然死の発生が劇的に少なくなって来たのではないのですか?

子どもが可愛そうです。

これから育児を始める親にも悪い影響を与えかねません。
うつぶせ寝で窒息する事は絶対無い?
根拠も示せないのに発表してはいけません。

本当にSIDSを含めた突然死を無くしたいのであれば、

『うつぶせ寝は窒息する可能性がある』

と言っても良いのではないのでしょうか?

SIDSと診断された事例のほとんどが
うつ伏せ寝で発見されたと言う事実からも
SIDSを防ぐという観点からも
うつ伏せを危険だというのが
子どもにとっても親にとっても良い事だと思います。

日本のSIDS研究は欧米に比べて30年遅れていると言われています。
このガイドラインではさらに差が広がってしまいます。

これまでと変わらず
うつぶせ寝は危険だというキャンペーンを
育児の常識になるまで
頑張って続けて欲しいのです。


乳幼児突然死:
解剖必要のガイドライン 厚労省研究班
 健康な乳幼児が寝ている間に突然死する
「乳幼児突然死症候群」(SIDS)について、
厚生労働省の研究班は18日、
SIDSの診断には例外なく解剖が必要とすることを
盛り込んだガイドラインを発表した。
解剖していない場合は死因を「不詳」とするよう規定し、
あいまいなSIDS診断を認めない内容。
過失による窒息や虐待などの
事故隠しを防ぐことにつながりそうだ。

 厚労省はガイドラインを日本医師会や日本SIDS学会、
警察庁、消防庁などに配布し、徹底するよう要請する
厚労省によるとSIDS診断例は95年が579件だったが
うつぶせ寝の危険性を訴えるキャンペーンなどの結果、
減少傾向で03年は244件まで減っている。
しかし、解剖せずにSIDS(の疑い)とする例も多く
、遺族らから厳格な診断基準を要望する声が上がっていた。
【玉木達也】

毎日新聞 2005年4月19日 10時58分

左の文章は、
今回のガイドラインに付いての
ネット上にあったニュースです。

他にも新聞で流れたニュースでは
新しいガイドラインは
これまでの基準よりも
とても厳格化したものだ。と報じています。

実際は窒息死と診断することのみを
厳格化しているのだということを
知っておいて欲しいと思います。
騙されないでください。
 
ガイドラインの中にある
この下に抜き出した一文は
死因を特定する上で
とても重要なことですが

乳幼児突然死症候群(SIDS)と窒息などの外因死との鑑別は、
解剖所見のみでは困難な場合があり、
病歴、生前の健康状態、
状況証拠などを総合的に検討する必要があるところから、
小児科医、病理医、法医の間で諸検査、解剖精度、
死因診断などについて
共通の認識のもとに行われることが望まれる。

具体的にどうするべきか
その方法については明記されておらず
ただの希望を書いているのみなのです。

このシステムの確立がとても重要です。
研究を進める上でも
予防に役立てる為にも
とても大切なことだと思います。
ここをもっと掘り下げて欲しいです。


今回発表された
これまでのキャンペーンの効果を否定する
新しいガイドラインを見て改めて、
うつぶせ寝の危険を訴えていかなくてはならないと思いました。

それが
犠牲になった子ども達
これから生きていく子ども達
家族
当事者になるかもしれない
看護、育児を任された人
そして医師も

全ての者を守る事につながると思っています。


我々の立場で出来る事を考えています。
天国にいる子どもたちと
その家族の協力で出来る事です。

近いうちに公開します。
是非皆さんにも協力して欲しいと思います。
よろしくごお願いします。