大阪高裁 平成14年4月12日

大阪高裁で一つの訴訟が結審を迎えました。
遺族の勝訴です。
その記事を以下に貼り付けます。

この結果が今までのSIDSの不正使用を
『SIDSと言っておけば、どんな保育状況でも許される』
これを今後許されない事に変えてくれます。

この事故を起こした保育園は
事故当初から遺族に対して
保育に落ち度が無かった、と言う事も無く、ただ
SIDSだから仕方が無い、と言うだけでした。

ご遺族はこの保育園に認可を与え
業務を委託していた神戸市に対して
訴訟を起こしました。

今回の高裁での判決は2000年3月9日に
一審で遺族が勝訴した判決に対して
訴えられた神戸市が上告したものです。
事件の概要は
生後4ヶ月の女の子
入所初日預けて2時間後に死亡
(朝10時に預けて、10時40分就寝、12時に事故発生)
うつ伏せ寝で寝かせ付けた。
敷布団の上に防水マットが敷いてあった
あしあとのページで紹介させていただいている
まどかちゃんの事故に対する判決です。

それでは、ニュースを貼りつけます。


乳児院での女児死亡巡る損賠訴訟、神戸市の控訴棄却

 神戸市の子育て支援制度を利用し、
同市内の私立乳児院に預けた生後4か月の長女が死亡したのは、
保母がうつぶせに寝かせながら十分な注意を払わなかったためだとして、
兵庫県明石市のコンピュータープログラマー M.Sさん(47)と妻のYさん(42)が
神戸市に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が12日、大阪高裁であった。
浅野正樹裁判長は「十分な観察がされていれば死亡することはなかった」と述べ、
市に約3900万円の支払いを命じた1審・神戸地裁判決を支持し、市の控訴を棄却した。

 裁判では、死亡したまどかちゃんの死因が窒息死か、
SIDS(乳幼児突然死症候群)によるものかが主な争点になった。

 判決で、浅野裁判長は、まどかちゃんの敷布団の上に、
通気性の悪い夜尿症用の防水マットが敷かれていたことを新たに指摘したうえで、
「顔を真下にしたうつぶせ寝で鼻や口が圧迫され急性窒息で死亡した」と
1審の判断を是認。保母らの責任について「防水マットを敷いていたことから、
より多くの頻度で様子を見る義務があったのに怠った」と指摘した。

(4月12日18:22)
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女児死亡:神戸市の控訴棄却 保母の観察不十分 大阪高裁判決


 神戸市の子育て支援事業を利用中、
うつぶせ寝にされた女児(当時4カ月)が死亡したのは
保母らの不注意による窒息が原因だとして、
両親が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が12日、
大阪高裁であった。浅野正樹裁判長は「保母らの観察が不十分だった」として、
神戸市に約3900万円の支払いを命じた1審・神戸地裁判決を支持し、市側の控訴を棄却した。

 兵庫県明石市のコンピュータープログラマー、
M.Sさん(47)と妻Yさん(42)が訴えていた。
95年4月、神戸市内の乳児院で長女のまどかちゃんがうつぶせ寝のまま死亡したが
死因は乳幼児突然死症候群(SIDS)とされていた。

 神戸市側は解剖報告書などを基に
「硬めの寝具を使っているため、うつぶせ寝で窒息することはありえない」などと主張。
しかし、浅野裁判長は「自重で鼻が圧迫されて窒息する可能性は十分ある」などとした。

 父のM.Sさんは「この裁判を契機に乳幼児を預かる現場が、
赤ちゃんの安全を守る改善策を講じてくれれば」と話した。
一方、神戸市児童家庭課は「亡くなられたことはお気の毒ですが、
主張が認められなかったのは残念。判決をみて(上告するかは)検討したい」としている。 
【山本直】

[毎日新聞4月12日] ( 2002-04-12-20:04 )


今までの悪しき判決から
少しずつ流れが変わってきている
そう感じ始めています。
昨年の10月17日の湧介君の判決に続くとても良い流れです。
速報のページに紹介しています。)

このまま、この問題で苦しむ家族が増えることなく
また、今苦しんでいる家族の苦しみが少しでも軽くなる
そうなる事を願います。



司法が役に立たなかった時代のケースとして
友美ちゃんに付いてのページに紹介した事件があります。
12年前の事故では、
解剖結果が窒息と診断されているにも関わらず
遺族が納得の出来る判決は望めなかったのです。
詳しくは、友美ちゃんに付いてを一読してください。
遺族の憤りがご理解戴けると思います。



平成14年4月12日
この判決を迎えた同じ日に
香川県の飛士己君を虐待死させた園長が逮捕されました。
テレビなどでご覧になられた方がいると思いますが、
報道されなかった部分で少し補足します。

逮捕容疑は、昨年の10月に起こした傷害です。
この傷害事件は、
園児の頭を太鼓のバチで殴り
全治一週間の怪我を負わせたというものです。
この時被害者の家族は
警察と行政に対して
『このままでは、いつか死人が出る』
そう通報しています。
その後行政指導が入ったのですが、
なんの役にも立たなかったようです。
そして
飛士己君を襲った最悪の出来事が起こりました。
この事件が起こってようやく傷害事件での逮捕なのです。
警察が早めに行動していたら、と思うとやり切れません。


飛士己君によせてのページに書いた補足ですが
香川医大の解剖医がテレビ局の取材に対して
何故『SIDSの疑い』と診断したかについてお話をしていました。

葬式に間に合うように、とりあえず付けた
と言っているのを僕は見ました。他にも、
こんな大騒ぎになると思わなかった
とも言っていました。

書類を埋める為、まるでやっつけ仕事の様に
我が子の身体が切り刻まれる事を遺族が望むと思っているのでしょうか
遺族は真相究明が出来ると信じて
泣きながら我が子が解剖される事を我慢するのです。

このような姿勢が
SIDSの不正使用に苦しむ家族を増やす。
その一因になるのです。

また、この事件を伝えるマスコミに対して気になる所があります。
無認可保育園であるとか認可保育園であるとか
そこを議論の中心に持っていく報道がありますが、
それは的外れです。

この件は、たまたま無認可保育園で起こっただけで
この虐待をした人間が認可保育園で働いていたら
そちらでも事件が起こった可能性があるのです。
結局は人間性の問題です。
場所は二次的なものです。

問題の本質はやはり
虐待した園長と前例を放っておいた行政、警察
そしてやはり『SIDSの疑い』とつけた
解剖した医師です。


2002年4月12日